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ノルウェーの現代作家の話題作、「我が闘争」シリーズ第三弾、読了。
Karl Ove Knausgaard "Boyhood Island: My Struggle 3" どの巻もしみじみ素晴らしくて、読み重ねて行くと共に、深みが増す。 ここでは、記憶のある3歳ぐらいから、他の町へ引っ越していく13歳ぐらいまでのエピソードが綴られる。緻密で現在形で進むスタイルは前と同じだが、ここに来て、このスタイルに、不思議な奥行きが出てくる。 つまり、前二作は、大半が成人になってからのエピソードであるため、わりと素直に「事実」として読み辿っていた。でも、今回は、うんと幼い頃の話である。 それなのに、「牛乳をグラスについで、上にできた泡を眺めていると、ドアの開く音がしてビクっとした。」みたいな、実況中継形式で進むと、なんというか、ああ、確かにこれは「自伝的小説」、あくまで小説であるのだった、記憶のエッセンスや大まかな出来事を、いかにも今起こっているように脚色しているのか、と、(今更ながら)気づかされる。 事実をそのまま淡々と、何の策略もなく書き綴っているようでいて、実は強い意図と、技量が仕込まれていて、だけれど、読む側には、あくまで、その場にいて同じ空気をすっているリアルな感覚を保たせる、という、ああ、すごいなあ、この文章力、と。 それから、第一弾で、アル中と精神錯乱の中、悲惨な死を遂げる父親が、ここでは、強烈な権力を持った、力強い、男盛りの人間として登場する。この、死→生、の逆の流れが、思いもよらず、強いショックを引き起こした。生きて、死ぬ、ことが、とても生々しく感じられる。 父親への恐怖や憎しみに、すべての思考と行動が支配されている、幼いKarl Oveに、自分の記憶も重なって、グっと引き寄せられ、自分のトラウマを辿っているような気分に。 すべてが徹底して、幼いKarl Oveの視線から描かれる、あるいは、そう読ませる。 (テレビで生々しい手術を放送している。) また、北欧ならではの子供の生活が伝わるエピソードも多い: 「最初の授業は外がまだ暗くて、僕らは明るいカプセルの中に座っているようなのが好きだった。みんな、髪の毛が少しハネていて、眠たい目をして、ピントのぼやけたような動きをしているのが、日が進むにつれ、ピントがだんだんシャープになり、しまいには、全員、かけずり回り、大声で呼びかけ合い、体をバタバタと動かすのだった。」 こうなると一気に6巻まで読破したいのだけど、第4巻、英訳版は、まだ予定が出ていない。どうか翻訳が進んでますように。 当ブログ関連記事: →第一巻について →第二巻について # # #
by rflux
| 2014-08-17 12:54
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