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こんな時だからか、先日、図書館で手に取った本は、これだった:
「アガーフィアの森」ワーシリー・ペスコフ著 (新潮社) 1978年に、旧ソビエトのシベリアのど真ん中で、完全に孤立して40年間に渡り暮らして来たルイコフ一家(発見当時5人)が偶然発見された。 この本は、ソビエト大手新聞社のある記者が、1982年から10年に渡って、彼らをほぼ毎年訊ね、「何故、どのように」を綴ったルポルタージュだ。 次の人家までなんと、200キロもある、完全に孤立され、冬は氷点下50度になるような土地で、40年間、一度も他の人間に会わず、もちろん電気も、ニュースも、まるっきし無し。宗教的理由から、自ら望んでここまで移動してきたのである。 とにかく文明から完全に孤立しているので、たまたま空き缶を見つけて利用する、といったこともないわけで、たとえば、鉄製品は40年前に彼らがあるコミュニティーから離れ、移動して来た時に持って来たものだけ。 78年に発見された当時、80歳に近い父親と、60代〜30代の成人した4人の子供たちがいた。下の子供たちは、生まれてから、それまで、家族以外の人間にすら会った事がなかった。それでも、聞き取りづらいが、ロシア語を話し、読み書きもなんとかできる。 ジャガイモを沢山栽培し、木の実や野草を採集し、ごく稀に掘った穴に落ちた動物にありつく。暗く、まったく清掃されていない汚れのつもった小屋で寝起き。火は石で起こす。わずかに麻を栽培して、自作の原始的な機織りで布を織り、体をなんとか被う。 当時はソビエト中が、この驚きの遭遇に夢中だったらしい。10年に渡って記者がそのとんでもない僻地に、大変な苦労をして通ったのも、読者からの熱い要望に押されてとのこと。 もちろん、話としては、そんな彼らが、「文明」と遭遇したことによる、驚き、不安、そして興味と歩み寄り、といった10年に渡る展開を読み進めるのがとても面白い。 ただ、電力に異様なまで依存していることがむき出しとなっている今日この頃、究極、そんなところでも人間、生きてゆけるんだなあ、という驚きとともに、どこか勇気づけられたり。(とはいえ、もちろん私みたいなのはシベリアじゃ、電気あっても生き延びられないだろうけど。) そして、彼らの暮らし続けたシベリアの森は、死と隣り合わせの自然の恐ろしさと同時に、一体、どんなに雄大で美しかっただろうと、思いを馳せた。 # # #
by rflux
| 2011-03-30 22:50
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