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ここのところ、自宅のMacで一番長時間走らせるソフトは、iTunesになった。音楽ではなく、Pod-castを聴くのだ。
今まで、沢山ブックマークしてきたネット・ラジオ番組が次々とpod-castも始め、iTunesで楽しむことを覚えた。ネットのストリーミングだと、接続状態が不安定で途切れることが多かったのだが、MP3のダウンロードだと音が安定するし、途中から聴いたりできるし、いちいち各サイトに行かなくても、登録 (=subscribe)すれば、自動で更新される。 そんなわけで、すっかりPod-cast中毒。アメリカ時代から15年以上慣れ親しんだNPR(National Public Radio)の定番や、BBC、Guardianといった大手の他にも、Pod-castならではの番組なども新たに開拓し、常にリストを更新している。今は厳選(?)の12番組を登録。近頃のお気に入りをいくつか紹介します: ◆ This American Life Pod Cast人気No. 1も納得、シカゴ発、とびきり上質のラジオ番組。毎週テーマごとにインタビューや、レポート、フィクションや回録から、アメリカの日常を描き出す60分。 ホットとクールの絶妙なバランス、時にシュールで、時にユーモラス。アメリカ短編小説のマイスター、Raymond Carverのラジオ版みたい。これも一重に、ホスト、Ira Grassのセンスの良さか。 今は、アメリカの医療保険制度についての2回に渡る特集。つい先日は、リーマンショックから1年たった、その後の人々のレポート。それから最近、"Frenemies" なんてトピックもあった。Friend-Enemy の造語。辞書にも載ってるらしい。「友達」なんだけど、実は心の底では張り合って、憎悪しあう仲。(身近なトピック..) この番組はかれこれ15年近く続いているが、私は1年ほど前に、友人に教わった。聴き始めたらはまって、過去の回を一日4本ぐらいのスピードでムシャムシャとぜ〜〜んぶ聴いてしまった。 ◆ Stuff You Should Knowこちらは新しいお気に入り。 始めてホスト二人の声を聴いたとき、なぜかギクっとした。それもそのはず、これはアトランタ発の番組で、ホストがモロにアトランタ-南部訛りだし、人柄的にも、昔よく周りにいたような感じだし、ローカルな話題もあって、アトランタの空気に包まれたような不思議な気がする。 「ねえ、チャック!バカな人ほど幸せって本当かなあ?」「それはねえ、ジョッシュ君、僕のリサーチによるとねえ、」と仲良しの二人が気軽に会話しながら、身近な "Why, What, How" について考える20-30分の番組だ。 「何故、人に体毛があるのか?」「お金はホントにいくらぐらい必要か?」「ゾンビは実在するのか?」「最悪の死に方は何か。」など毎週、好き勝手なトピック。 くっだらな〜いジョークに二人でケラケラ笑いながらも、なかなか興味深い情報をしっかり集めてきていて、かなり楽しいのである。 こちらも最近、4回に渡ってアメリカの健康保険制度についての特集を組んだ。タイムリーかつ切実な問題なんだな。 女子版の、"Stuff Mom Never Told You"も、馴れてきたらなかなか楽しい。(ちなみに、これらの番組を提供している、How Stuff Works とは、North Carolina 州立大学の教授が立ち上げた、Discovery Channel資本のプロジェクトらしい。) ◆ Splendid Tableお料理の番組。ホストのLynne Rossetto Kasperの太くて深い声、朗らかな口調と大きな笑い声、湧き出る食への好奇心、幅広い食材と料理法の知識、どれをとっても楽しい。 アメリカの生活に根付いたグルメなトピックが中心だけど、日本のラーメン文化を紹介したり、インドの弁当配達や、もちろんイタリアだのフランスだのの話題も多い。 リスナーが電話してきて、冷蔵庫にあるものを使って、素敵なディナーを作る即興のコーナーやストリートフードのレポートなど、いろいろ楽しい。料理が得意でもないのに、食べ物の話やクッキングショーって飽きない。ケーブルでFood Channelが入ってたら、多分ずーっと観てしまうだろう。 とかく中毒になりやすく、あんまり登録しすぎて、常にラジオを聴き続けている状態もあって、少し不健康。せめて携帯電話では聴かないように心がけています。
今回の台湾訪問のハイライトは、何と言っても南仏、マルセイユのバンド、Lo Còr de la Planaだった。
![]() 実は数年前、マルセイユに彼らの出演する音楽フェスに参加しておきながら、「なんとなく疲れて」彼らのステージの前にホテルに帰る、というひどい失態をしていた。(ホントこういう間抜けなことよくするんだよね..) ま、CDで聴きゃあいいよ、程度の意識だったのだが、そのステージを見た連れが完璧ノックアウトされ、バカなことをした私を散々、残念がるので、気にはなっていた。そんな矢先、台湾での公演を知って、それでは是非、と思ったのだった。 男性6人組のコーラス・グループである。 ..という"肩書き"と、彼らのステージの圧倒的素晴らしさをどう繋げたらいいだろうか。とにかく、あのステージは体感しないといけない。心がドっと全開して、声とリズムのシャワーに打たれる、なんともいえない快感。 心洗われる体験となった。 彼らの持つのは、自らの声と、ベンディール(北アフリカの打楽器)だけ。シンプルな歌声の力強さ。ズンと響くリズム、手拍子、足拍子。それが、ひたすら気持ちよくって、楽しいのだ。とびきり熟れて新鮮な野菜をスパっと切って、オリーヴオイルと塩こしょうでいただくような、ピュアな喜び。 小柄だが鋭い目をしたリーダー、Manu Theronの指揮する、ワイワイ気さくなパーティー感と、しっかり計算されたステージの構成力も見事だ。 今回のライブの詳しいレポートは、こちらを読んでいただきたい。 初日の晩に彼らのライブですっかり陶酔して、次はどこで彼らを見られるか、しきりに考えていた翌日、立ち寄ったおしゃれなベジタリアンのカフェに、なんとリーダーのManuとメンバーの2人がいるではないか。数年前に会ったことも覚えていてくれたようだ。 ちょっとだけ立ち話をしたら、「さっき知ったんだけどさ、暮れに日本でライブやるよ。」とのうれしい情報。まだ確定した話ではないが、こんな早くにまたステージの彼らに会えるかもしれない話にウキウキだ。 もしこの来日が実現したら、周りに徹底的に宣伝活動しようと意気込んでいる。だって、あの気持ち良さは是非とも多くの人に体験してほしいから。
台湾に二泊三日の小旅行。
この隣国は、初訪問。私の「台湾」は、ホウ・シャオシェン、エドワード・ヤン、アン・リー、ツァイ・ミンリャン、といった素晴らしい映画人の描いた映像の集合体。 しかし、今回は、映画ではなく、音楽の旅でした: Migration Music Festival ![]() 主催が、Trees Music & Art とあるように、美術にも深い理解のある団体なのだろう、この素晴らしいロゴと、イラスト。手作りなイラストにカチっと対比させたシャープなグラフィック・デザイン。かな〜〜りプロですね、素晴らしいです。 思わずTシャツも買ってしまった。入り口の旗も素敵。その他、パンフレットやプレスパスなど、印刷物はレイアウトから紙の質まで、実にしっかりと作ってあって、気持ちよかった。 ![]() To be continued... 次回は、肝心の音楽のお話。
久しぶりのお休みで、映画観て!部屋片付けて!お友達と会って!とイソイソしていたら、連休キックオフの当日、体調不良で完全ダウン。出張、セミナー、引っ越しと続き、その他モロモロ、ストレスで、ついに体が悲鳴をあげたのであった。
休養を必要としていたので、ちょうど良かったのだろう。そんなわけで、楽しみにしていたアクティビティーの半分もこなせず。 で、楽しみにしていた映画も、たったの2本観に行ったのみ。それも、アメリカのドキュメンタリーの大家、Frederick Wiseman の " Law and Order " (「法と秩序」/ USA / 1969)と、韓国の"キムチ・ウエスタン"、" The Good, The Bad, The Weird " (Ji-Woon Kim / Korea / 2008) という何ともランダムな2本になってしまった。 言い訳すると、当初の予定では、まだ1本も観たことのなかったWisemanを、ユーロスペースで3本ぐらいは観よう、あとは、フランスのAssayas監督の"Clean", イタリアの巨匠オルミの新作、それから、イタリアの話題作「湖のほとりで 」あたりを観てから、guilty-pleasure系として、「カムイ外伝」と、"The Good, The Bad.." あたりを観ようかしら、なんて計画してたんだけど、真ん中をすっ飛ばすハメになってしまったわけです。 " Law and Order " は、60年代のカンザス・シティーの貧困地区での警察官の日常を追った作品。数セント騙しとろうとするタクシーの運転手と乗客とのいざこざや、小競り合いの仲介など、街の警官って実に細かいことをしている。 それにしても、毎度ながら、40年前のアメリカのゲットーって、今と変わってない、というなんともダークな事実。ここ40年間で、金持ちばかりが上にいき、底辺にいる人々の生活や暴力的な悪いサイクルはちっとも変わっていないのではないか。 " The Good, The Bad, The Weird " は、非常にユーモアのセンスが良かった「反則王」の監督の新作&ソ・ガンホ主演ということで、期待大だったからか、ちょっと物足りなかった。ブラックユーモアでも、おバカ系でもいいけど、とにかくもう少し笑わせて欲しかったし、もっともっとブっとびにはじけて欲しかった。ラスト近く、砂漠を馬でひたすら暴走する群衆のシーンは気持ちよかったけど。 ![]() またしばらく映画館には行けないかな。体調を整え、ゲージツの秋にしたいものです。
今夜、ハクビシンを見てしまった。
先ほどまで聞いたこともなかったモノである。 夜の10時過ぎ、窓の外をフト見ると、雲の後ろに光る月はほぼ満月。 曇っていても光は強く、ベランダに出て、しばし月に見惚れる。ぬるい夏の夜のそよ風も気持ち良くて、ベランダの端に座ってぼんやり。 と、目の前にある電線がやけに揺れている。 揺れを辿ると、電線の上になにやらモソモソと動いている。 目を凝らす。ネコか... でも、電線である。ちょっと太めのものとはいえ、せいぜい直径5センチの綱の上を、ネコがこんなに歩くもんだろうか。アレ...だって頭の形がちがうじゃないの!え?!えー!! と、静かにチョー大仰天。 ![]() キツネのわけないから、タヌキなのだろうか、そういえばタヌキって見たことないかも、こんな形なんだろうか、でもタヌキってこんなヤセてんのかな、あのシッポ??だいたいなんでコレ、こんなノソノソ落ち着いて綱渡りしてんの、落ちないの、電気にビビってなったらどうしよう... ソレは、ネコぐらいの大きさなんだけど、ネコのしなやかで軽い動きとはまったく違う身のこなしで、まるで地面をあるいているような安定感で、淡々と進んでいく。下には歩行者が通ったが、もちろんその人は今頭上に、得体の知れない生き物が通り過ぎていることなど知らない。 ドキドキしながら、ソレがどうやら無事隣のお宅の庭の木に移動したことを確かめると、さっそくネット検索。タヌキのイメージ検索をしたが、顔の輪郭はなんとか近いけど、体つきがどうも違うし、尻尾が全然違う。 すると、こんな分かりやすいサイトを見つけ、まさしくハクビシンたるイキモノであることを知った。 都心で見かけるのは、わりと珍しいらしい。(→東京都23区内のハクビシンおよびアライグマの目撃分布) 先日、家族の者が、家にアオムシがいたときの恐怖を語り、「人工的な都会で見るから怖いのではないかと思う。ジャングルで葉っぱについたムシを見たって、あたりまえで怖くないような気がする。」と言っていた。 ネコなら、かわいい、と思ったろうに、知らない生き物と知ったとたん、かなりギョっとしてしまった。しばらくしたら、数軒先の犬がさんざん吠えていたけど、あのイキモノ、是非とも無事に都会を生き抜いてほしい。
アルジェリアのポップスター、Cheb Mamiがついに逮捕され、禁固5年の刑に。
→BBC News 記事 いとしのマミ、5年間待ってます。ぜひ再活動して日本でも歌ってください。 日本ではまったく知られていないMamiだけど、フランスでは大スターである。これぐらいのセレブが牢屋に入ると、どんな扱いを受けるのだろう?暴力沙汰とはいえ、人が死んだ訳ではないので、フランスの刑務所なら少しはお手柔らかにしてくれるかな... と書いてフト思い出した。今年のカンヌ映画祭で話題になった一作: The Prophet ( Jacques Audiard / 2009 / France ) ![]() アラブ人の若い男の子が、フランスの片田舎の刑務所に入り、だんだんマフィアのドンになっていくスリラーだそうだ。フランスのひどい刑務所事情が描かれている... Oh, no!! マミ、大丈夫かなあ。5年は長い。..映画は楽しみ。 スリラーといえば、M.J.氏が突然亡くなり、一気に盛り上がってますね。コドモの頃、2年間ぐらい狂っちゃうほど大好きでした。中学校をさぼって、ディズニーランドに「キャプテンE.O.」を観に行ったことなど思い出してしまった。89-90年あたり、オハイオ州、クリーヴランドにて、ライブを観に行ったようなかすかな記憶もあるが、どうしても何も思い出せない。行ってないのかな。
フト、食卓を改めて眺めると、雑然と本が散らばっている。
![]() アメリカから日本に引き上げてきた際、たいしたことなかったけれど、本の重さにうんざりした。10年かけて日本からせっせと運びこんだ書物、少しずつ買い集めた写真・美術・映画・デザイン書、各種辞典、全集、マンガ、旅先で集めた不思議な本。 好きな本を壁一面に並べることは、自分のエクステンションを作り上げているようで、とても大切で楽しいことだった。でも、国をまたいで引っ越しするとなって、蓄積されたアメリカでの生活と一緒に、バサっと捨ててしまった。 だから、東京に戻ってからは、美術本などは一切買わず、読む本は極力図書館を利用し、買ったとしても、読み終わったら図書館に寄贈するか、周りに配分している。 そして、あまり本屋には足を踏み入れない。 んだけど、時々入ってしまうと、欲望がムクムクと。読みたい本買ってたら切りないよなあ、でもたまになので、数冊購入。一冊増えたら、一冊減らすストイックさを心に言い聞かせ。
BBC Newsのトップエリアにこんなニュースが:
→ Deadly stampede at Rabat festival (BBC) ラバトにて開催中の音楽フェスの最中に、フェンスが倒れて死者が出たとのこと。 で、7万人が殺到したのは、モロッコのシャアビ・アーティスト、Abdelaziz Statiを観るためだったそうである。 確かこの人は6本指のバイオリニストである。んでもって、強烈にすごい。私はシャアビといえば絶対Senhajiなんだけど、数年前このStatiの音楽に出会ったときは、正直、一番の実力者だと思いました。 だって、どうです: ![]() 音は、こんな感じ→You Tube のクリップ ちなみに、このクリップの下にこんなコメントがある: 「こんな音楽が好きな人がいるなんて信じらんない、気違いみたいにバイオリンかき鳴らして..」 多分ニュースになって不幸にもこのリンクに辿り着いた人ないんだろう。 ..わかってないのである。このクレイジーさが、まさにシャアビのツボなのだから。 せっかくモロッコ、それもなんとシャアビにスポットライトがあったったのだけど、ぜんぜんいいニュースじゃない。フクザツな気持ちである。 追記: 駄ネタで本当にすみません、ついでにまた見つけてしまった、モロッコの「どっきりカメラ」 → Stati編 → Senhaji編、第2弾... (彼のしゃべり方、本当にいいなあ。こんなの見て喜ぶのは私一人でしょうか...) Il Divo( Paolo Sorrentino / Italy / 2008) @「イタリア映画祭 2009」 イタリアで、1946年から7期に渡って首相を務め、後に多くの汚職事件関与で起訴された、Giulio Andreottiについての作品。 当時のイタリアの情勢と、イタリア語が分からないと、この作品の本当のウマミは堪能できないのだろう。 正直、話にまったくついていけないし、「コメディー」要素たっぷりと聞いていたのに、笑いのスポットが分からない。会場で声をあげて笑っているのは、イタリア人かイタリア通だけだったのではないか。つくづくイタリアって知らない国だなあと思った。 なんだけど。良かった!!だって、こんなカッチョイ〜音楽の使い方、ちょっとないですよ。のっけのロックでガンガン攻めるシーンから、あっぱれの「サンバ」シーン、毒のある花のようなクラシックの旋律、ポップなリズム、なんでもこいの音の魔術。そこに、バチリと合わせ込んだ映像と編集で、完璧シビれてしまう。ぜんぜんこれだけで観る価値あり。 話がよくわかんないけど、腹黒そうな男たちや、ローマの街や重厚な室内など、雰囲気があるし、猫背で無表情のマスクをかぶった首相を演じるToni Servilloの演技も圧巻であった。彼は、今回の映画祭でもトリであった話題作、 "Gomorra" にも出演している。(チケット売り切れで観られず、残念。)
東京ではいつ見られるのだろう:
Let The Right One In ("Låt den rätte komma in" / Tomas Alfredson / Sweden / 2008) スウェーデン発、バンパイア映画である。いじめられっこの中学生の男の子が、近所に住むバンパイアの女の子と知り合いになり、という"青春モノ × 吸血鬼モノ"らしい。去年冬に、アメリカの友人から、一押しプッシュがあった際、確かに秋に滞在していたスウェーデンでポスター見かけたなあ、見とけば良かったかな、程度の認識。 しかし、この4月からイギリスでも公開になり、愛読している映画誌 "Sight & Sound" で大きな特集記事が組まれ、ジャンルを超えた最高のバンパイア映画として高い評価。 お気に入りの番組であるGuardian紙のPod-cast, Film Weekly では、コメンテイターは「4月の時点ですでに一位というのは悲しいのでやめとくけど、でも絶対今年のベストの二位か三位は確実!!」、ホストも「とにかく、見たことないユニークさ」を繰り返して大絶賛。 バンパイヤ映画が一体どうなったらここまで高い評価を得るのか、ちょっと想像できないので、興味津々だ。簡単なサーチでは日本での公開情報は得られなかったけど、ぜひ大画面でみたい。 ちなみにこの作品のタイトルは、イギリスが誇るポップスター、モリッシーの曲のフレーズなんだとか。 ![]() そして、水族館エクスペリエンスについてしばし考える。理想の水族館ってどんなだろう、と。フィジカルなデザインの前に、どんなエクスペリエンスを生み出したいのか、そこがキーとなる。 足を踏み入れたとたん、ちょっと怖くて不安になるぐらいの異次元の世界に、ワっと包まれる、そんな空間。子供だったら、怖がっちゃうぐらい。でも、強烈な記憶として残るような、ちょっと怖いけど、すごくドキドキ、ワクワクする感じ。海の中って、それぐらいの不可解なエネルギーがあるところだろうから。 「いろいろな海の生き物を展示する」といった資料性の高い場所ではなく、海の中を体験する --必ずしも、「本物」とは限らず、演出された「体験」として。日常では体験できない、ちょっとバランス感覚を失うような、そして、病み付きになるエクスタシーを感じるような空間。 テーマは、クラゲ。外見は巨大なクラゲ。夜にはぼんやり光りを発する。 中は、クラゲの体内の宇宙。有機的にゆったりと曲がりくねる通路。床も、壁も、すべてが緩やかに湾曲している。そして、壁も床も天井も、透明の世界。深く巨大な、水に包まれる。あたりは薄暗い。足下をぼんやり照らす照明は呼吸するかのようにゆったり色が変化する。頭上からは、キラキラと注ぎ込む光の柱。 すっぽり囲まれた海の中を、ひたすら魚たちが気持ち良さそうに泳ぎ回る。群れをなす小魚の柱。時には、そこにサメが突進してくる。ひらひらと舞う、エイ。色とりどりの熱帯魚。 静寂と、ときどき流れてくるささやくような音、サメの横切る音。あるいは、不思議な楽器のミニマルな音色。(Steve Reichに3時間ぐらいヒタヒタと回転しながら展開するスパイラル・ミュージックを依頼する。魚の動きに反応するリズムなんてのもいい。) 深い海、浅い海、熱帯の海、極寒の海。道筋ごとに、テーマが分かれる。中央には巨大な広場。水面の天井から強く美しい太陽の光が差し込む。ぼんやりずっと寝そべって過ごしてもよし。 *** ...こんなのがいいなあ。 パリにあるアラブ研究所やQuai Branly博物館、今年みた馬のサーカス、Zingaroなど、ぶれないエクスペリエンス・デザインのコンセプトを持って空間を生み出す能力、やはりフランスはすごいなあとつくづく思った。 日本でもこういったデザインをできる人間はちゃんといるはずなのに、とかく「一般向け」と設定すると、いろいろな提供側の都合や、「一般大衆にはこの程度がいいだろう」という勝手なおしつけで、コアなコンセプトのない、巨額の資金をつぎ込んだ、安全で清潔で、刺激と感動に欠け、ペラっと蛍光灯のフラットな光の、いらないノイズに満ち、ダサい制服姿の係員が高い声で動き回る、水に薄めたような空間がボコボコできてしまうのだろう。(--もったいないなあ、と思ったまでです..) 夢にでてきてくれないかな、my jelly-fish aquarium.
Mumbai Meri Jaan
( 「愛しのムンバイ」/ Nishikant Kamat / India / 2008 ) またまたインド映画の奥深さにノックアウト。2006年7月11日のムンバイでの列車テロを題材にしたドラマだ。 始まりは、庶民的なカフェ。若い男たちが集っている。テレビでは、ジダンの「頭突き事件」の報道が流れている。男たちは、このニュースに夢中だ。"あれ、インドでサッカーなんて人気あるんだっけ?"と怪しんだとたん、会話は、ジダンがムスリムであることに流れていく。ヒンズー教徒の若者たちは、複雑な気持ちで、「テロリスト呼ばわりされた」ジダンについて語る。「そうか、彼らにとって、この事件はそういうつながりがあるのか」と、今まで考えなかった切り口にハっとする。 ムスリムへの憎しみが心を蝕む男、腐敗した退職前の警察官、思わぬ形でテロに関わることになるテレビのレポーター、事件のトラウマに苦しむエリート会社員、貧困のフラストレーションを生きる男。それぞれのストーリーが入り交じり、テロのショックに混沌とするムンバイを描いていく。 裕福な人から貧しい人まで、それぞれの苦しみ、不安、悲しみ、そして喜びと、"redemption"がある。当然なのだけど、そこを丁寧に描いていることが、新鮮だった。 クライマックスのラストシーン〜エンディング・クレジットの演出 --あのエンディングで、この選曲!!!-- も、思い返すだけで涙がでてくるほどで、とにかく細やかで洗練された脚本と演出、そして演技だ。 役者たちがしっかり演技をできる場を与えられているのが伝わってきた。Slum Dog Millionaire では、ちょっと中途半端な役で、もったいなかった Irfaan Khanも、こちらでは存分に楽しめる。(--彼はいい役者だなあ、"Life in.. a Metro"でもよかった。) そして、ボリウッドでは浅い役でしか見ていなかった、Paresh Rawalも、深みのある味をだしていて、やればできるのか!と感心。 若い監督のデビュー作らしいが、これからも楽しみ。このような完成度の高い洗練された作品こそ、日本のミニシアターでもピックアップして欲しい。
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